「ちはやふる」をもっと楽しむ 登場順に和歌解説【君がため】

漫画「ちはやふる」をもっと楽しみたい方へ!

登場順に和歌を解説するシリーズ、四首目は「君がため」です。

平安時代には、若菜摘みという行事が行われていました。

現代で言うとハイキング?と思われがちですが、実はそんな軽いものではなかったようです。

若菜とは春に芽生える山菜です。

この春芽生える新しい生命力の力をいただくため野山にはいり若菜を食べたり、身につけることで土地の神様の力や、生命力を得る。

といった一部宗教的な側面を持った儀式として行われていました。

そんな大事な若菜を作者の光孝天皇は誰に送ったのでしょうか。

それでは、解説していきます。

1.ちはやふるでの登場

登場:1巻

前回に続き、千早、新、太一の3人でヒョロくんチームと源平戦をした時によまれた札

千早の一字決まりを新が取った後、太一の担当だった大山札でお手つきをしてしまうも、

新は相手の陣地にあった当たり札をしっかりとっていた。

いよいよ何がチームだコノヤロウとなるシーンですね。

2.歌の意味

君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ

読み:きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ

意味:あなたに差し上げるため、春の野原にでかけ、若菜を摘んでいる私の着物の袖に雪がしきりに降り掛かってくる。

作者:光孝天皇

3.送った相手は不明、あなたの想像次第です。

まず最初に歌の説明をした後、誰に送ったのかという話をします。

歌の解説

当時、季節の変わり目には贈り物をすることが一般的でした。

そしてその贈り物には歌を付けて贈るというのが習わしとなっていました。

光孝天皇は、春の始まりに若菜を摘みに行って、大事にしている相手に若菜とこの歌を贈ったということです。

若菜について

若菜は長寿を願う春の野草として広く知られていました。

なぜ若菜と長寿が結びつくのでしょうか。その理由は2つあります。

1つ目は若菜には薬用効果のあるものもあり、これを食べることで健康に過ごすことができるという意味。

2つ目は歳を積むと若菜を摘むのつむがかかっているんですね。それで歳を積む長寿と若菜摘みを重ねたおまじないのような意味。

雪について

雪は若菜と合わせて出てくることの多い単語です。

視覚的に、若菜の緑と雪の白を対比していて、綺麗かつ清らかなイメージにしています。

光孝天皇はまさにこのイメージで、汚れを知らない純粋培養されたような心をもった天皇でした。

こんな純粋無垢な歌を詠める天皇ですから、天皇即位後も政治を藤原基経に任せていたのも納得がいきます。

腹黒い政治の世界には合わないと察していたのでしょう。

また袖に雪がしきりに降り掛かっていると表現することで、あなたのためならどんな苦労をしても若菜を摘むよ。

といったニュアンスがあり、相手のことを強く思う気持ちが表現されています

光孝天皇はこの歌と若菜を誰に贈ったのか

君がための君これは誰のことかという話ですが、誰に送ったかはわかっていないそうです。

色々な人物が候補として上がりますが、考えられるのは2人です。

1人目は藤原基経、2人目は詳細不明の恋人

説1:藤原基経説

1人目の藤原基経は清和天皇、陽成天皇、光孝天皇、宇多天皇の4代に渡って政治の実権を握っていた人物で、日本史上初の関白になりました。

少し脱線しますが、関白とは天皇の補佐を行う官僚の職名で最終的な決定権は天皇にあるものの、主導権は2人ともにあるというような政治の中では最高の位のことです。

関白と並べてでてくる役職に摂政があります。

2つの違いは成人した天皇の補佐をするのは関白、未成人の天皇を補佐するのが摂政で、役割に大きな違いは無いと思って構いません。

摂関政治と呼ばれるこの時代では、摂政・関白が事実上全て政治を行っていたというわけです。

話をもとに戻すと、光孝天皇がなぜわざわざ若菜摘みにいって藤原基経に送ったか。

言い方は悪いですが簡単に言うと、政治の権力者である藤原基経のご機嫌取りだと言う説です。

これから自分の関白として政治を行ってもらう藤原基経の長寿を願って送ったのではないかという説があります。

天皇なのに関白とは言え家来でしょ?わざわざご機嫌取りなんてする必要ある?と思われる方もいるでしょう。

これには2つの背景があります。

背景1:光孝天皇は政治あまり興味がない

1つ目は光孝天皇はあまり政治に興味がなかったということです。

興味のない政治は藤原基経に任せてしまおう。という気持ちから激励の意味を込めて、贈った可能性。

背景2:藤原氏の勢力は天皇を凌ぐほど強大になっていた

2つ目は藤原氏の勢力は兄弟になりすぎていたことです。

光孝天皇の次の天皇、宇多天皇の時代では、ちょっとした天皇の言葉選びのミスでいじけて政治を放棄してしまいます。

それでは困ると天皇が自らの発言を誤りと認めてしまった。と言う事件があります。

天皇の発言を覆させるほど藤原氏の勢力が大きくなっていたということです。

そんな藤原氏の機嫌を損ねないように贈ったのではないかという可能性。

説2:恋人説

2つ目は詳細不明の恋人に贈ったのではないかと言う説です。

誰かは全くわかっていないが、光孝天皇が思いを寄せる相手に贈ったのではないかと言う説があります。

思いを寄せるあなたのためであれば、たとえ雪が降っていようが若菜を摘んで差し上げますよ。

という強い思いが感じられますね。

4.「ちはやふる」での解釈

先に言わせて下さい。

今回のシーンとこの歌では、中々解釈がうまく合致しないと思いました。

百首の中から毎回そこシーンに合う歌はさすがの末次先生も無理だと思います。

どうしても妥協しなければいけない場面を有りますよね。

それが今回なのかなあと思ったりしましたが、一応私なりに考えた解釈を紹介します。

太一がチームのため、と思って純粋無垢な気持ちで札を取った。

でもそれはお手つきだった。(雪との対比?)

ちょっとやはり無理がありますよね。

これ以上想像力が働きませんでした。。。

5.最後に

「君がため」いかがだったでしょうか。

私は恋人に贈った説が好きです。

純粋な天皇だからこそ、ご機嫌取りで贈り物なんてしてないんじゃないかなというのが、そうであってほしくないな。と思いました。

恋人のほうがロマンチックに読めますし!

「ちはやふる」での解釈は今回は合致していないような気がしましたので、あまり追求しないことことにしました。

でも自分はこんな解釈したよ!というものがあれば是非教えて下さい。

和歌ってもう昔のことだし、今となっては想像でしかわからないことって多いと思うんですよね。

その人による解釈が違う。っていうのが面白いところだと私は思っています。

繰り返しますが、是非あなたの考えた解釈を教えてもらえれば嬉しいです。

次回は「朝ぼらけ」です。

それでは!