漫画「ちはやふる」をもっと深く味わいたい方へ!
登場順に和歌を解説するシリーズ七首目は「白露に」です。
この歌は間違いなく、ちはやふる1巻では最もシーンに合った感動する一首です。
ここに出るべくして出てきた一首で間違いありません。
6年生大会直前まで一緒に練習してきた3人の別れを勘ぐらせる登場になっています。
詳しくは、歌の意味、登場シーンの詳細をみて味わって下さい。
1.ちはやふるでの登場
登場:1巻
千早、新、太一の3人が白波かるた会に入り、6年生大会に出場した時に詠まれた。
いつもどおり全く最初は取れない千早にエンジンがかかるように取った最初の札
2.歌の意味
白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
読み:しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける
意味:草葉の白露に風がしきりに吹く秋の野では、紐に通して留めていない真珠の玉が散っていくようだった。
作者:文屋朝康
3.美しい白露が儚く散っていく様
単語の意味
白露:秋の晴れた夜にできる水滴、露は秋の風物詩として有名です。
白露の白は清らかさを強調する言葉です。朝の光があたってつやつやの綺麗な水滴を考えて下さい。
吹きしく:しきりに風が吹いている。台風より弱いくらいのそこそこ強い風に使う。
つらぬきとめぬ:貫き留めぬと漢字をあてることができます。貫いて留めていないということで、真珠のネックレスをイメージして下さい。
1本のひもで通して留めてありますよね。それが留めぬなので、バラバラになっていく様子を表しています。
玉:真珠や宝石のことです。ここでは真珠とするほうが理解しやすいですね。宝物と言い換えても大きな意味の違いは無いと思います。
真珠が散っていく様子とあわせて、白露も同じ丸いものとして玉が掛かっています。
真珠の玉と白露の玉の掛詞です。「真珠の玉が散る様子」と「白露が散る様子」の二重の意味をもたせています。
散りける:真珠のネックレスのひもが取れ玉がバラバラに散ってしまった。という意味です。
全体の解釈
雨がふり、秋の野原一面に茂る草木(すすきや茅)の葉や茎に露がついてキラキラと光っている。
そこに秋の台風の風が吹き込み、露が飛ばされてバラバラに散っていく。
まるでネックレスがほどけて真珠が飛び散っていくようだ。(秋らしい情緒を感じられる情景だ。)
作者の文屋朝康は白露の散っていく様子を秋っぽくて美しい、艶やかだと感じています。
これはきっちりと整わずに乱れたものに美しさや艷を感じる感覚があったからです。
例えると、和服の女性のおくれ毛に色気を感じる。と言ったような感じですね。
4.千早、新、太一の美しい少年時代から別れを想起させる歌
さて!「ちはやふる」での解釈に移りましょう。
単語で解釈してもわかるくらいこのシーンはわかりやすいです。
そしてどこか悲しい感情になります。
単語をちはやふるで解釈すると
白露:3人でかるたをする青春や友情
風の吹きしく:3人を離れ離れにしようとする周りの環境、具体的には新の引っ越しや太一の進学です。
秋の野は:ここでは秋ではなく、進学や転校のシーズンである3月頃を示していると思います。
つらぬきとめぬ:3人の関係を繋ぎ止められない。
玉ぞ散りける:宝石、宝物のような3人の関係がバラバラに散っていく様子
全体を通して解釈すると
とびきり美しく光る3人の青春が、3人それぞれの強い環境変化によって関わり続ける(つなぎとめる)ことができず、真珠のように美しく散っていく。
この1巻の段階では、散るかどうかはわかっていないんです。6年生大会でしっかり優勝して、離れ離れになるけど形には残る結果を出すかも知れません。
しかしながら、この白露にを聞くと、ここで3人は負けてバラバラに散っていくのではないかと思わされます。
そんな中でも3人の青春、友情は白露のように清く美しいと表現されていて、その散っていく様子も美しい。
真珠とも言える3人の青春の清々しさや気持ち、それが叶わず散っていく様子すら美しいと言っています。
平安時代の儚さの美学が理解できるような気がします。
5.最後に
「白露に」味わっていただけたでしょうか。
実はこのシリーズを始めようと思うきっかけになった歌がこの「白露に」です。
なんともまあ3人の境遇と歌をあわせて綺麗にそしてわかりやすく表現されていることに感動しました。
1巻はこれで終わりですが、2巻からももっと「ちはやふる」を楽しめる、味わえる記事を書いていきます!
あなたの解釈もあれば、是非私に教えて下さい。
人の数ほどいろいろな解釈があり、深く味わうには様々な解釈を知ることが大事だと思っています。
それでは、また2巻で会いましょう。