「ちはやふる」をもっと楽しむ 登場順に和歌解説【たれをかも】

漫画「ちはやふる」をもっと楽しみたい方へ!

登場順に和歌を紹介するシリーズ、2巻の二首目は「たれをかも」です。

この歌は長生きをしてしまったがゆえに周りの友達が先にいなくなってしまい、虚無感、寂寥感をつのらせた。という内容です。

千早も新と太一と離れてからは一人ぼっちでかるたをやっていましたよね。

2巻ではどんなシーンでこの歌は使われたのでしょうか。

それでは解説していきます。

1.歌の意味

たれをかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに

作者:藤原興風

一体誰を友としたら良いのか、高砂の松と言っても昔からの友達ではないのに。

心を持たない松に心を寄せてみても虚しいだけだ、という意味です。

松は長寿の象徴

松は昔より長寿の象徴として、和歌に登場してきました。

今回の高砂の松とは、兵庫県播磨南東部に位置する高砂市のあたりの松のことです。

このあたりでは、白い砂浜と青松が美しいことで有名です。

この浜辺に広がる松と浜風のイメージがより一層寂寥感をつのらせます。

寂寥感とは、なんとなくわけもなく心が寂しい様子のことで、

遠くを物憂げな目線でぼんやりと眺めているイメージです。

2.歌が詠まれた背景

自分の寂しさを松を使って表現したこの歌、どうしてここまで強い寂しさを感じていたのでしょうか。

その背景には、長生きしてしまったがゆえに友人が先に死んでしまったことにあります。

その結果、当時は理想とされた長生きがただただ虚しく、この歌を詠んだのではないかと言われています。

友人の訃報

友人の訃報、つまり死の知らせを聞く度に寂しい気持ちを感じていたのでしょう。

それが何度も重なり、最終的には自分しか生き残っておらず、周りの友が全員いなくなったんですね。

理想とされるはずの長生きから虚無感が生まれた

当時は現代のように医療や食品などが豊富ではなかったため、長生きすることが一つの理想となっていました。

作者の藤原興風は理想とされる長生きはしていましたが友人がいない虚無感、

もう友になれそうなのは松しかないとそこまでの寂寥感に囲まれていたということです。

3.ちはやふるでのワンシーン

さてそれでは、ちはやふるでのワンシーンについて解説します。

登場したシーンは千早が高校生になり、かるた部を作ろうと部員募集のポスターを貼ったりして色々活動していました。

そんなとき中学生の時の友達から陸上部にまた入ろうと誘われます。

ですが、ちはやはかるた部を作ることを優先しようとします。

そんな日の帰り道、原っぱで横になって千早の唯一のかるた友達、専任読手のCDで百人一首の読みの音声をきいていました。

そんなときに聞こえてきた歌が「たれをかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに」です。

その後はにこやかに太一が現れ、千早と太一は昔のように楽しみながら会話をして帰っていきました。

言葉を当てはめて解釈すると

ちはやふるのシーンにこの歌を適切に当てはめると、

長生き、高砂、松、知る人、友の5つがわかると、ぐっとちはやふるのシーンを味わえます。

長生き:千早のかるたへの思い

かるたへの思いをいつまでもずっと持ち続けていて周りの友がいなくなってしまった。

周りの友がいなくなって自分に残ったのはかるたへの思いだけ。

どちらの解釈も可能ですね。

高砂:学校

このシーンの前に学校での友達の青春を見ていた千早

まさに高砂の美しい砂浜に重なりますね。

松:専任読手のCD

松と同じく心のないCDが千早の友だちになっていました。

知る人:まだ見ぬかるた部に入ってくれる部員

これからかるた部に入ってくれるであろう部員は誰なのか、そもそもいるのかと原っぱで考えにふけっています。

友:新や太一などの昔からのかるた友達

あてた言葉をまとめて解釈すると

みんな学校での部活や他のことが忙しくてかるたの友達はもういなくなってしまった。

専任読手のCDだけが私の友達なんだろうか。

昔一緒にかるたをした新や太一を思い出して、寂寥感に襲われている。

そんな中、太一が現れました。

専任読手のCDだけが友達だと思っていたところに思いがけない昔同じ道を目指そうとした太一がいた。

友達がまだ残っていた!と幸せに思い、喜びを隠せない千早が描かれています。

4.最後に

いかがだったでしょうか。

本来の歌では、虚無感だけで終わってしまうところですが、ちはやふるでは太一が現れてくれるんです。

これからの2人の活動を期待させるような再会ですね。

ちはやふるでは実際の歌の背景とちはやふるのストーリーにギャップが有るところが味わい深いところです。

藤原興風は友人はいなかったが、千早にはいた。もし藤原興風にもこの歌を詠んだときに友人がいきなり現れたら飛び上がって喜びますよね。

それを千早に変わりに代弁させているんです。

読めば読むほど味わえる漫画です。

次回は「春過ぎて」です。

お楽しみに!